高校あるあるネタですが学年に1名はいる、ありえなく遠い場所から通って来る遠距離通学の生徒。
僕が通っていた高校では栃木県宇都宮市のJR東北本線「岡本駅」から東京都武蔵野市のJR中央線「吉祥寺駅」まで通学する岡本君(仮名)がぶっちぎりのNo.1、隣県の埼玉を縦断して東京都武蔵野市までの小旅行…大学や会社ならまだしも高校生なんだから少しは学校選びを考えなさいよ(`Д´)ノ
乗り換えサイトで調べてみたら所要時間は2時間30分程度で思ったより短い時間でビックリ、でも岡本君が高校に通っていた頃は35年前の昭和時代、今よりも車両の性能や乗り継ぎが悪くてもっと時間がかかっていた筈です。。
現在岡本駅ホームには以前は乗り入れして無かった烏山線の車両がやって来ます(写真は宇都宮駅で撮影)。
烏山線の誇るEV-E301系(ACCUM)は蓄電池を搭載して、架線の無い非電化区間を電気で走行が可能な車両、学校同様に勤め先も遠距離通勤となってしまった岡本君のバカ高い定期代の売上で購入した車両なのかな?とありえない妄想をしてしまいます。
〈目次〉
蓄電池駆動電車のEV-E301系
車内に入りトイレだと思いきや機器室…蓄電池電車のメリットは電車内に大容量の蓄電池を搭載して、電化区間・非電化区間の共通運用が可能な事、エンジンによる騒音やCO2排出など環境負荷の低減もあります。
デメリットは気動車と比較すると車両が重く加減速性能が劣り、高速や長距離の路線には不向きな事。
現在、烏山線以外の蓄電池駆動電車はJR東日本の男鹿線やJR九州の若松線・福北ゆたか線・香椎線で導入しており、烏山線は直流仕様ですが他の路線は交流仕様の車両が走っております。
7時11分に宇都宮駅を出発した烏山線、車両基地ではお休み中のEV-E301系が「行ってらっしゃい」とお見送り。
電車は間もなく朝日が眩しい岡本駅ホームに滑り込みますが、仮に高校生の岡本君がこの時間にいたら確実に遅刻(>_<)
宝積寺は建築デザイナーの隈研吾さんが携わった、一際目を惹くデザイン性溢れる駅舎。
当時岡本君は日の出前から家を出発するのがデフォルトだったのです
僕達の通っていた学校は高校入学の数年前にまぐれで甲子園出場を果たしたせいか、勘違いで入学する野球少年が多く岡本君もそのひとりでした。
非電化区間を走る電車の烏山線
宇都宮~宝積寺までは東北本線に乗り入れの烏山線、本来の起点駅は宝積寺なのですが今は殆どが宇都宮発で宝積寺発は1日わずか3本。
東北本線(宇都宮~宝積寺)に乗り入れを開始したのが平成7年、EV-E301系「ACCUM」が運行開始されたのが平成26年ちなみに岡本君の高校入学は昭和62年。
宝積寺駅でパンタグラフを下ろして蓄電池駆動へと切り替わります(写真は隣駅の下野花岡で撮影)
宝積寺を出発後、東北本線と分岐して烏山線のルートに入ると架線の無い開けた景色が広がる非電化区間。
デザイン性の高い宝積寺駅と比べるとバス停に毛が生えた状態の隣駅「下野花岡」
岡本君は入学後野球部に入部しましたが2ヶ月程で退部してしまいました、理由は通いきれない為で練習後の東北本線は終電ギリギリだったそうです。
野球で甲子園に出る目標(架線)がいきなり無くなってしまった岡本君、仁井田駅前にある高校を見ながら、その位は入学前に調べておきなさいよ…と思ってしまいます。
「島ちゃんオレやっぱり甲子園が諦めきれないよ…」学校の帰り道、岡本君はよく僕に言っておりました。
大金駅前にある「ナスカラ市場」は那須烏山市の特産品を販売しており、ブランドである山あげ牛の「かけるメンチ」が有名。ナスカラ市場
退部した後も大金を投じた定期券を持っての遠距離通学は続きます
烏山線の観光名所「龍門の滝」
烏山線はICカード乗車券「Suica」が利用不可、有人駅では乗車券を購入、無人駅では乗車時に整理券を取り降車時に車内の運賃箱で精算するバス方式。
宝積寺以外の7駅には七福神のキャラクターが割り当てられております。
沿線内で随一(?)の観光名所「龍門の滝」は滝駅から徒歩5分で近くに流れる川は「江川」
ある日岡本君は僕に「島ちゃんオレ阪神タイガースの入団テストを受けるよ」と言い出しました。
翌日野球部の皆さんに「岡本が阪神の入団テストを受けるってさ」と言ったら「部活を早々と挫折した奴が何がプロ野球だ!」と滝の様に非難囂々。
岡本君「島ちゃん余計な事言わないでよ💧」
高さ約20m幅約65mの滝の中段には直径4mの男釜と直径2mの女釜と呼ばれる2つの縦穴があります、そこには神通力を持った龍神様が棲み村人たちの願いを叶えたと言われております。
今となっては年齢制限もあるでしょうが、龍神様と向かいにある太平寺でお願いした後、中日ドラゴンズの入団テストを受けてみたらイイでしょう。
JR東日本赤字公表線区の「宝積寺~烏山」
龍門の滝から終点の烏山駅までは歩いて行きました、烏山駅に到着したEV-E301はパンタグラフを上げて充電中。
1両分だけのスペースに架線が設置されており折り返し運転に備えて急速充電、架線はケーブルでなく棒みたいな物体、これは大電流が流れても破損しないように剛性のある架線を利用している為です。
2022年7月にJR東日本は地方路線のうち、利用者が特に少ない66の区間について収支の状況を初めて公表、残念ながら栃木県で唯一引っかかってしまった烏山線の「宝積寺~烏山」区間。
鉄道 【データ詳細】JR東日本 利用者少ない区間の収支 初めて公表 | NHK
かつては烏山駅から茂木駅(現真岡鐵道)、常陸大子駅(現JR水郡線)へと延伸する計画もあったそうですが立ち消え盲腸線になってしまい、岡本君の野球人生同様に中途半端な終点になってしまいました。
昭和の国鉄時代には使命を終えた「赤字83線」に選ばれながらも現在まで生き長らえてきたしぶとい歴史もありますが、利用者の減少は続いており学生の為の電車になっている現状。
全国からプロを目指すスポーツ学生が龍門の滝に訪れ、ナスカラ市場で美味しい肉を買って烏山線を利用して欲しいもの、そんな想いを抱きながら折り返しの車窓を眺めます。
宇都宮で湘南新宿ラインに乗り換えて帰りますあの時と比べ宇都宮と都心の距離も随分縮まった事でしょう。
岡本君「島ちゃん…オレ宇都宮の作新学院に入学してピッチャーをやれば良かったよ」(ノД`)ムリムリ
画像引用先:【センバツ名勝負伝説06】怪物江川、広商野球に敗れる | 野球コラム - 週刊ベースボールONLINE